早めに見えなくなると思います。
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宇宙線キャンディー
 宇宙線キャンディーは口の中を通り抜けるような苦い刺激が走る。その苦みは口の中を超えて、頬の表側にも、耳目にも、脳みそにも刺激が走る。

 頬に走る刺激はキス。耳目はどこかへつながり、脳みそが私に話しかける。

 宇宙線キャンディーは一瞬で溶けてなくなった。口の中では確かに堅かったのに。

 宇宙線キャンディーを私に食わせた大きな怪人が溶けるようにして、ただの人になった。あんなに大きかった船外服は余り、指先の手袋にも手が半分しか届いていない。何より、頭にあった地球のかぶりものがなくなっている。

 そしてその逆、私の身体にも変化が起きた。手足は伸びて太くなり、顔が膨らんで窮屈だ。チャイムが鳴ってスペースシャトルの玄関で出迎えたから船外服を着ていたが、このままだと顔が抜けなくなってしまう。

 私は焦っていた。突然一人きりのスペースシャトルに訪ねてきた怪人に暴力で脅されて宇宙線キャンディーを食べさせられただけでなく、私が怪人になっていたのだ。そんな状況で私に宇宙線キャンディーを渡した怪人突然襲ってきたのだ。手加減できるはずがない。

 襲ってくる男を拒否するように手を伸ばす。それだけで腕が男の船外服ごと貫いた。殺してしまった。男は私を憎む顔をしている。

 男を船外へ放り出し、男のスペースシャトルを尻目に一気に逃げた。いつの間にか、腕のダッシュボードの中にはいくつものキャンディーが入っている。

 理解していた。私は地球に呪われたのだ。

 地球は望んでいる。私を利用して北極星へ行きたいと。無茶苦茶な話だ。いくらスペースシャトルがあっても、北極星まで何百年とかかる。しかしさすがの地球、回避する方法を用意してくれた。どうやら、北極星に近づき、腕のダッシュボードに入った宇宙線キャンディーを素質のある人に食べさせたら地球が相手に移るようだ。

 地球はもうない。とっくにない。素質はきっと、地球と何かしらの関係があるかどうかなんだろう。

いつの間にか体の変化は終わっていた。頭が地球になって船外服が抜けない。北極星へなんて行けない。

 私は宇宙線キャンディーを人に食べさせる怪人になった。

 北極星に近づきながら、他のスペースシャトルを襲う。怪人の身体のおかげで、失敗して逃げるのも容易だ。それでもなかなか宇宙線キャンディーで怪人に変身してくれない。みんなすぐに消えただけで味がないと言う。

 なぜみんな宇宙線キャンディーの味がわからないのか。あの苦く刺激的な身体すら無視して広がっていくあの味を。

 また味わいたくなる。あの音を、目に映る世界を、絶世のキスを。

 腕のダッシュボードに入っている宇宙線キャンディーを口に含もうとしても、怪人となった私に口はない。

 人間に戻りたい。その気持ちが日に日に大きくなっていく。

 そして二つ目の星座を通り抜けるころ、ついに地球が宇宙線キャンディーを食べさせた相手に移った。

 私の身体が縮んで行き、相手の身体が大きくなっていく。口を意識すると、唇が動いて舌が口内を感じた。

 宇宙線キャンディーは、相手の腕のダッシュボードにある。

 私は怪人となった相手に襲い掛かった。もう一度、いや、何度も宇宙線キャンディーを味わいたい。その欲求で頭がいっぱいになった。もう、いっそ怪人から人へ戻るを繰り返し、北極星にたどり着くまで私が怪人を続ける覚悟だった。

 それなのに相手は私を拒否するように腕を出して、私の腹を貫く。

 わかった。どうして私に宇宙線キャンディーを食べさせた男が、人間に戻って私を襲ってきたのか。

 意識が薄れて行く。あの音、景色、キス、地球が私たちを愛しているという話はもう味わえない。
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by swingpop | 2015-04-06 23:54 | 日常